制作者について

私は2000年に東京芸術大学美術学部を卒業しました。その後2002年に同大大学院を修了しました。大学時代は油画専攻でしたが、その後版画研究室に移り、主に伝統木版画の技法を使った作品を制作しました。卒業後は一貫してコンピューターを使用した作品を制作し続けています。
 
作品をご覧頂きありがとうございます。なぜデジタルを使って絵を描くのか?それはひとえに私の制作者としてのリアリティを詰め込むことのできるメディアであるからです。
 デジタルは人々の生活に浸透しながらも、あえてそれを絵画のための道具として使う人はまれであると思います。デジタルは実寸を把握しながら作業することが難しく、直接的な描画もできないので、絵の具を使った従来的な絵画技法に比べて作品の表現力や完成度をあげることが困難であると考えている人は多いと思います。おそらく、私もその一人であると同時に、デジタル的二次元表現に可能性を発見し、新しい表現を生み出すことに取り付かれた人間であるとも言えます。 私は制作するときに、いくつかの写真を使います。その後のダイナミックな展開を可能にするため、写真は徹底的に分解され、描き込まれ、あるいはトレースされます。私の作品はこの行程をもってより強固なストーリーを描き始めます。
 憧憬とも言えるような静かで密やかな風景が私の中に息づきはじめ、そこに存在する空気や生き物すら実際に呼吸し始めるかのようです。私のフィルターを通して新たな命を得た写真であった断片たちは彼らの生きる世界を実現させるための構成要素として画面の中に定着させられて行きます。私は仮想的状態での制作を余儀なくされる訳ですが、それはとるに足らない問題です。厳密に、重層的に構成されて行く世界は一足早く私の頭の中で完成され、私は息をひそめてその具体的イメージを追いかけて行きます。世界をより忠実に表現するために、結果的に数十のレイヤーが重ねられ、描線の太さにも気を配りながらの作業をもって完成へ近づいて行くのです。

  レジュメをこちらからご覧頂けます。


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